紙ラボ

失敗しないパネル張り

失敗しないパネル貼り

ミ ューズ式 失敗しないパネル張り

パネル張りは、波打ちによる描き辛さを解消するための最も有効な手段です。しかし慣れていないと難しく、失敗のリスクを考えるとハードルが高いもの。 そこで原料のパルプごとに異なる紙の吸水力や、乾燥にともなう伸縮、といった紙の生理現象を熟知したミューズが「失敗しないパネル張り」をご紹介します。 紙の乾燥速度に負けず、きれいに・確実に・一気に接着できる、水張りテープを両面テープに見立てたパネル張りです。従来とは全く異なる方法で、失敗しがちな大型パネル張りまで、仮止めの必要もなく素早くきれいに完成できる独自の方法なのです。

準備/必要な道具・材料

必要な道具と材料

紙の準備

水彩紙を用意します。
※ワトソンのようなコットン配合の水彩紙は、水や折り曲げに強く、保水性が高いため、水張りに最適です。

手順1

紙をパネルの大きさ+折り返し分天地左右15mm分大きめにカットします。 このとき表裏の区別のため、裏面に鉛筆などで印をつけておくと良いでしょう。

パネルの絵
手順2

紙のウラ面の真ん中あたりにパネルを置き、パネルの大きさ(折り線部分)を鉛筆で記しておくようにします。

パネルの絵

紙は水分を吸うと伸びるため、この伸び幅を予め計算に入れて紙をカットすると、折り返し部分を揃えることが出来ます。

テープの準備

ミューズカラーテープを事前に切っておく。

手順3

水張りテープをあらかじめパネルの桟と同じ長さに切りそろえておきます。

パネルの絵
手順3

さらに仕上げの化粧貼り用にパネル1周+数cm分の長さのテープを準備します。

パネルの絵

注意

水張りテープは湿気を帯びると一体化して固まり、使用できなくなります。使い終わった水張りテープは付属のポリ袋に入れて空気を抜き、しっかり封をします。

※食品用ラップフィルムに巻いてからポリ袋に入れ、乾燥した場所で保管するとより安全です。
※水張りテープを取り扱う際は粘性を発生させないために必ず乾いた手と場所で作業してください。
※水張りテープの除去方法:パネルから除去するには水を十分に染み込ませ、水が全体に馴染むまで放置するときれいにはがせます。

パネルにミューズカラーテープを貼る

パネルの取り扱いについて

1)
木製パネルは、種類によっては濡れると表面の目止め剤が流れ出てきて紙を汚すことがあります。軽く濡らして、できるだけ目止め剤を拭き取っておきましょう。
2)
表面に大きなささくれを見つけたら取り除きます。紙を貼った時に凸ができてしまう原因となります。同様にゴミもつかないよう注意しましょう。
3)
木材は紙を酸性化し劣化させる要因となります。長期使用を想定するのであれば、パネル表面をジェッソなどで目止めするか、表面をアク止め加工したパネルを使用します。

手順

手順4

パネル面を上向きにして桟にスポンジで水をつける。

パネルの絵

注)ミューズカラーテープには水をつけない。

手順5

図のように貼り残しを設け、3で切りそろえた、テープ1~4を貼る。

パネルの絵

注)粘着が発生するため、必ず乾いた手と場所で行うこと。

  
手順6

ミューズカラーテープを貼り終えた状態。

パネルの絵

天板側の約10ミリ程度の貼り残しが後日、パネルから本紙を切り外す時の切り込み位置になります。

手順7

桟に貼ったテープ部分に糊を塗布し、頭出ししたテープを矢印方向に折り返して接着。

パネルの絵

注)一般的な水溶性の糊を使用(ボンドは不可)

下向き矢印
パネルの絵

紙の水潤作業

パネル張りは紙に水を吸わせ、伸びた状態でパネルに固定するのが基本原理です。このときの伸び方が十分でないと完成後に波打ってしまいます。水彩画を描く場合、刷毛で紙の片面だけ濡らす程度では不十分なことがほとんどです。
また、数時間紙を水に浸したままにするのも紙の品質上おすすめできません。 そこでミューズ式パネル張りでは、下記の「水潤方法」をおすすめしています。 (ワトソンなどコットンを主原料とする水彩紙向き)

条件によって水潤時間を調整する

水潤:紙の表裏全体に水を流しかけるか、水槽などにつけこむ。
放置:水かけをやめる、または水槽から引き上げて平置きして放置する。

水潤を3回繰り返す方法

鉛筆画や淡彩画程度の使用や紙が薄い(200g程度)の場合

水潤作業一例

水潤の手順

※3回でも給水が十分でない場合は4回、5回、6回と増やしたりして描き方や紙にあった水潤時間を決めましょう。

紙の水潤作業

手順8

■大きい紙の場合はホースでかける

作業用に少し大きめの板を別途用意し、水をゆったりかける。

ホースで水をかける図

■小さい紙の場合は水槽に漬け込む

ウラ面を上にして作業し、紙が折れないように注意する。水潤作業中、少し持ち上げて平板と紙の間から水を流し込みオモテ面にも水を与える。

水槽に浸す図

注意

※ウッドパルプの紙は乾燥が早いため、放置時間を2~3分程度に縮める必要があります。
※水濡れや折り曲げに弱い紙は、水潤回数を減らすか、刷毛で濡らす程度の方が良いでしょう。
※ケント紙の水張りなどは描画面の平滑性を護るため、裏面のみを濡らす方法を選ぶことがあります。
※水張りをするとサイジングが強い紙でも表面のサイズ剤が流れて、絵具のはじき具合がある程度落ち着きます。
※紙によって乾燥の早さ、伸縮の度合い、水濡れ強度などが違うため、上の表を基準にして描きたい紙の種類や厚みに合わせ、水潤時間を調整してください。

紙の張り込み・仕上げ作業

手順9

水潤作業が終了したら、紙はウラ面を上にして、刷毛で空気を抜きながら平板に吸い付かせる。

パネルの絵

ポイント! 平板に置いた紙を端に少しずらしてはみ出させておくと、反転させた時に紙が手に取りやすい。

手順10

準備しておいたパネルをおおよそ紙の天地左右均等の配置になるよう上に置く。

パネルの絵

ポイント! 平板に置いた紙を端に少しずらしてはみ出させておくと、反転させた時に紙が手に取りやすい。

手順11

平板が上になるように、平板とパネルを重ねたまま、ゆっくり反転させる。 (大型のパネルの場合は、二人で行うと安全である)

パネルの絵
手順12

上の平板だけを静かに取り除く。
(この時、本紙はオモテ面が上を向いた状態になっている)

パネルの絵
手順13

片方を静かに持ち上げて、刷毛で空気を抜きながらパネル板面に吸い付かせる。 この時点で紙はこの乾燥が始まっていますので、 この乾燥空気抜き作業はテキパキやる。

パネルの絵

折り接着の作業

手順14
パネルの絵
パネルの絵

手の腹を使い、天板から桟に向けて擦り付けるように圧着させ、角に膨らみを作らないようにきちんと折りたたむ。 (テープの糊面が露出しているので直接接着されていく) コーナーは、三角のツノができるよう特に丁寧にする。 (ツノの仕上がりが良いと乾燥後のシワは起こりません。) 圧着後、下の断面図の位置bになるaの空間を爪先で埋める。 (乾燥に伴う紙の縮みで、紙が破けるのを防ぐ)

パネルの絵
手順15

3で準備した仕上げ用のテープ5を側面に貼っていく。14の作業時点で、すでに紙はパネルと一体になっているため、仕上げテープ貼り作業はゆっくりと丁寧にできる。 はみ出たテープは裏に折り返す。

パネルの絵

仕上げ作業

  
手順16

乾燥は室内にて必ず水平にし、約1日自然乾燥させれば、完成。 (立てかけておくと紙に含まれた水分が下に移動し、乾燥速度が天地で異なり、 紙が破けることがあるので注意)

パネルの絵
パネルの絵
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